大判例

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東京高等裁判所 昭和59年(ネ)1747号 判決

賃借人が賃料を一か月分でも滞納したときは催告を要せず契約を解除することができる旨を定めた特約条項は、賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とする継続的債権関係であることにかんがみれば、賃料が約定の期日に支払われず、これがため契約を解除するにあたり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合には、無催告で解除権を行使することが許される旨を定めたものであると解するのが相当である。そこで、この見地から本件をみると、右1に認定した経緯に徴すれば、被控訴人は、昭和五二年二月ころからごく一部の時期を除いて賃料の滞納が特に長期化し、同五五年一月以降は一年半にわたり滞納を続け、催告を受けても支払わなかったため、遂に契約を解除され、それについて宥恕を懇請した結果、今後は一回でも滞納すれば直ちに無催告で解除されても異議がない旨を承諾することなどによって解除を撤回してもらいながら、すぐにその翌月分から三か月にわたり賃料を滞納し、約束した和解金残金の支払いもせず、しかも、その間控訴人に対して何の連絡もしなかったというものであるから、賃借人として著しく不誠実であり、信義に反するといわざるをえない。被控訴人が右支払いをしなかった理由について、八木弁護士から支払猶予を受け又は受けたと信じていた旨の主張を採用しがたいことは前示のとおりであり、また、無催告解除の特約が付された趣旨及びその意味内容につき、きよ子又は被控訴人がこれを誤解するような事情があったものとも認められず、ひっきょう、被控訴人において、右特約の追加により従来のルーズな支払態度を戒められたにもかかわらず、これをあまり意に介することなく、自己の資金繰りの都合などに合わせて延滞しても何とかなるという身勝手な考え方をしていたことに基づくものであると推認される。このような事情からすれば、他に特段の事情の認められない本件においては、控訴人が前記特約に基づき無催告で本件賃貸借契約を解除したことが不合理であるとは到底認められないものというべきである。

したがって、催告がなされなかったことをもって右解除を無効ということはできない。

(中島 佐藤 塩谷)

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